自作ランプ「モスマン(Mothman)?」
ライトブルーの経糸とパープルの緯糸のシャンブレーのオーガンジー
異なる色を組み合わせることで生まれるハーモニー。
この布地を見つけた時、「何を作ろうか」などと一切考えず、綺麗な配色に魅かれて衝動買いしてしまった。
後にシェードに化けるとは夢にも思わなかった。
ストックケースの中で何年か振りにこの布地と再会。
当時は何も作ることができなかった。
忙しいとか、暇だとか、そういう次元ではなく。
創作は心にゆとりがあるとか、無いとかも違う気がする。
ノったら寝食を忘れる。
表現したいという渇望が無いと僕はできない。
喜怒哀楽の隙間を縫う様にその時間は存在する。
今はその渇望の時間。
取り敢えず、その布地を引っ張り出すと、ビールを片手に思いを巡らす。
よくよく考えれば何のことは無い、特別な布地ではなく、昔、仕事で使った布地の配色に似ていて、残像として記憶の底にこびり付いていただけであった。
3本目のプルトップに指を掛けた頃には、引越しのアルバムと同じ状況になっていた。
記憶への解釈は我がままの度を極め収拾がつかなくなる。
こうしていつものように他愛も無い時間が過ぎていく筈だったが、この日は違った。
昼寝を挟んで復活した僕は、破損した折りたたみ傘の骨と、シャンブレーのオーガンジーを張り合わせ、市販の照明器具セットを取り付けた。
まだアルコールが残っているせいか、どうしてもデコラティブにしたくなった。
そして、完成したのがコレ
同系色の孔雀の羽を付けてしまった。
更に飽き足らず
止めれば良いのに、以前作ったビニールホースのLEDイルミまで
以前からの読者はご存知の通り、当然ライトアップするとこうなる
モスマン(Mothman)?
怪しさ倍増!あーやってもうた。
今日はこれにて御開き
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「伊豆の山の幸」
伊豆は海の幸ばかり注目されるが実は山の幸も豊富。
味覚を刺激する。
伊豆の山の幸なら猪鹿蝶のジビエである。
さすがに蝶は無いが、代わりにズガニが入る。
遠方からの営業の帰り、近道で峠を通るとヒャッとすることが多々ある。
暗闇のヘッドライトに突如浮かび上がる彼らに急ブレーキを踏む。
「道路の真ん中になんで人が?」
人か動物かの区別はつき辛い。
目を凝らしてようやく鹿だと気付く。
クラクションを鳴らしても、おっとりした彼らには通じない。
動じないのか、鈍感なのか
「とにかく撥ねなくて良かった」
自らの手で命を奪うことが無かった。車に損傷が無かった。
無垢な瞳に手を合わせそう安堵した。
東京では全く車を運転していなかったペーパードライバー歴何十年。
伊豆に来て4年、彼らのお蔭で急な飛び出しへの反応が早くなった。
再びゴールドの輝きを取り戻した免許証。
メダリストのようにかじることも、味わうこともできないが、代わりに鹿や猪を味わうことは厭わない。
通勤途上、他の車に撥ねられた鹿や猪の亡骸に、少しブルーな気持ちを引き摺るが、そこは人。
牛や豚、鶏と同様に後日しっかり頂ける。
鹿肉は血の気が多い為、熱すると臭みが出る。だから、赤ワインに漬け込んだり、ニンンクで臭みを取る。かなり美味い肉となる。
猪も鮮度が良ければ豚肉よりも美味い。
命は失われ、食して命は誕生する。
そう。
私は、料理を前に「頂きます」をする時、食物連鎖の頂点、「頂きにいさせてもらってます」との感謝をこめて
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「道化の涙に映る虹」第36話
前話
カーテンを超えて貴男の薄目に容赦なく差し込む日差し。そして、鮮やかなブルー。
否応が無くポートレートを撮って来いと言わんばかりの快晴だった。
昼まで寝たいという誘惑を断ち切り、貴男は布団を跳ね除け飛び起きた。
仕事以外で他人の都合に合わせるのは久しぶりだった。
まるでデートに行く様な浮かれた気分で洗面所に行く。
洗口液を口に含んで歯ブラシ手にした時、腹の虫が鳴った。
そうだ、慌てる必要など無い。貴男は、鏡に映る自分の苦笑いを初めて見た。
歯磨きを一旦止め、水で口を濯ぐとキッチンに向かった。
冷蔵庫の扉を左手で押さえ、右手で中にある酸味の効いた紅玉を頬張った。
いつも感じる二日酔いの不快さは全く無かった。
現時点で年齢はクリアしているが、アンナはジジイが嫌だと言っていた。
痛い若作りは避けつつも、年相応も危ない。
朝風呂に入り、念入りに髪をセットした後、海辺の景色に映えるような紺のジャケット、ブルーのグラデーションのシャツ、白のパンツ、当り障りのないワードローブを選んだ。
二度と味わうことが無いと思っていた高揚感が貴男をくすぐっていた。
身支度を整えていくうちに徐々に生きている実感が蘇ってきた。
玄関のドアを空けると、潮風が吹き込んできた。
貴男は深呼吸をすると、車に向かった。
晴れ渡る空と、眩い海のコンビネーションの美しさは、本当の意味で近くに住む者にしかわからない。
自撮りだけなのに、アンナと海に行く様な錯覚に捉われた貴男だった。
「道化の涙に映る虹」第35話
前話
「ゴメン。アンナ、いろいろあって疑り深くなっているんだ。赦してほしい。お金は無いけど友達でいてくれたら嬉しい」
半日ぐらい時間が経過したころにアンナから返信があった。
「タカは日本人なのにお金無いの?まあいっか了解。私もお金無いよ。確か日本語でびんぼうだよね(笑)」
「実は、前に自分がやっていた会社が倒産して、あっ、倒産てわかる?それでお金が無くなったんだ。でも、もう借金は無いよ」
貴男はアンナから返信があったことで少し嬉しくなっていた。
「倒産わかるよ。タカは経営者だったのか。大変だったね。私の友達で、お金目当てに日本の70歳くらいのお爺さんと結婚した人がいるよ。国際結婚何とか所にとうろくで」
「そうか。アンナはそういうところに登録しないの?」
「やだよ。お金無いより、ある方がいいけど。何でお爺さんと結婚?」
「そうか」
「そうだよ。そういえばタカの写真見てない。送って!お爺さんなら、さよならだよ」
すっかり忘れていた。貴男は自分の姿をアンナに見せていた気になっていた。
アンナがOKする基準はわからない。少なくとも、今のくたびれた姿は見せられない。
「天気の良い日に近くの海で撮ってくると約束したけど、仕事も忙しいし休みの日も天気悪かったんだ。もう少し待ってね」
アンナに気に入られようとしている自分を滑稽に思いつつも、貴男は苦し紛れの言い訳をした。
「タカはどんな感じなの?早く見たいよ」
「もともと自撮りが好きでなかったので最近の写真があまり無いんだ。ゴメン」
「そっか、残念(-ω-)/」
「ところでアンナは面食いなの?」
「どうかなぁ、普通」
「アンナの写真は本物なの?」
「前に日本いた時、モデル事務所にとうろくした時のオーディション写真だよ」
貴男にはますますプレッシャーが掛かっていた。
「道化の涙に映る虹」第34話
前話
仕事中に容赦なく睡魔が襲う。
貴男は、中抜けの時間に一時間程仮眠を取り、目覚ましのエスプレッソを飲みながらスマホをタップしてLINEを開いた。
真っ赤なバラの様なチュチュを身に纏ったアンナ、そのトップ画像をタップした。
「仕事おつかれさま(^-^) 好きな食べ物は みたらし団子です。また日本に行ったら食べたい」
貴男は、既読したアンナのLINEを何度も読み返し、心を掻き乱した要因を摘み取るべく返信した。
「もうお芝居は止めにしないか?僕を騙しても時間の無駄だよ。お金儲けをするなら、色仕掛けで金持ちを騙した方が効率的だよ。僕はお金が無いからね」
いつもは返信が早いアンナから返事が途絶えた。
時間帯からしても、時差による理由ではなかった。
貴男は、荒んだ心に隙間風が吹きつけようとした時、スマホのランプが点滅した。
「騙しと儲けという漢字が難しいから調べたよ。寂しい気持ち。残念な気持ち。タカも同じエロじじい。私がお金目当てなら日本にいる時、相手を見つけていたよ。わざわざ面倒なことをしないよ。タカはバカだね。わたしはお金も求めないし、だますこともしない。私にもプライドがある。タカは大きらい、さようなら」
業者では有り得ない、リスクを背負った怒りを露わにした文面だった。
貴男は、エロじじい、バカという単語に素直に怒りを覚えたが、アンナの言葉を反芻しているうちに、己の愚かさに贖罪を求め、騙されてでも信じたいと思うようになっていった。
「スピードを求める本質」
人や動物、乗り物等のレース、配送や調理等の作業時間、その他、種々の速さ(早さ)を要求される事柄。
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人は何故、そのスピードに魅了されるだろうか?
明日をも知れない、限られた命という時間の中で、誰よりも早く幸せに到達したいからである。
もう必要以上に仕事しない! 時短シンプル仕事術 (アスカビジネス)
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早ければ早い程、その価値は大きい。
そのパフォーマンスに、行っている本人も観客も仮想的に欲求が満たされる。
日本人は社会性を重んじる民族なので、他者より先に幸せに到達するのは気が引けると譲り合う善良な者も多い。
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「道化の涙に映る虹」第33話
前話
寝ようとしても目が冴える。
夜中を三時過ぎた辺りからウトウトし、やっと眠りについた。
「パパ、今までありがとう。さようなら」
成人式の晴れ着を纏った美月は、貴男に背を向け歩き出した。
「美月、待ってくれ。本当に悪かった」
自分の叫び声で貴男は目を醒ました。
目尻は乾いた涙でザラザラしていた。
「大丈夫、学費は何とかする」
会社を潰した貴男は、父親としてのプライドと、自分の様に借金を背負わせたくないという思いから、ギリギリまで金策に走った。
多額の借金もあったことで、友人、知人から信用を得ることは儘ならず、目標額の半分に止まった。
結局、奨学金申請をさせなかったことが裏目に出て、大学進学を諦めさせる結果となってしまった。
今更、どの面下げて娘に会えようか
掛け布団を払い除け、冷蔵庫に一目散に向かい、冷凍庫の中から凍って真っ白になったズブロッカの瓶を取り出すと、反動で中身の液体は瓶底からキャップに向かってゆっくりと波を立てた。
キャップの氷を落とし、ふきん被せて反時計回りに捻った。
桜餅のような芳醇な香りが何年か振りに鼻孔に向かって立ち上った。
思わず、瓶を口に近づけた貴男だったが、
お客に、酒臭い息を吹きかけるわけにいかない。
サービス業の悲しい性。静かにキャップを閉めた。
戻りたくても昔の家庭に戻れないのだ。
貴男は眠れぬまま朝を迎えた。