「道化の涙に映る虹」第34話
前話
仕事中に容赦なく睡魔が襲う。
貴男は、中抜けの時間に一時間程仮眠を取り、目覚ましのエスプレッソを飲みながらスマホをタップしてLINEを開いた。
真っ赤なバラの様なチュチュを身に纏ったアンナ、そのトップ画像をタップした。
「仕事おつかれさま(^-^) 好きな食べ物は みたらし団子です。また日本に行ったら食べたい」
貴男は、既読したアンナのLINEを何度も読み返し、心を掻き乱した要因を摘み取るべく返信した。
「もうお芝居は止めにしないか?僕を騙しても時間の無駄だよ。お金儲けをするなら、色仕掛けで金持ちを騙した方が効率的だよ。僕はお金が無いからね」
いつもは返信が早いアンナから返事が途絶えた。
時間帯からしても、時差による理由ではなかった。
貴男は、荒んだ心に隙間風が吹きつけようとした時、スマホのランプが点滅した。
「騙しと儲けという漢字が難しいから調べたよ。寂しい気持ち。残念な気持ち。タカも同じエロじじい。私がお金目当てなら日本にいる時、相手を見つけていたよ。わざわざ面倒なことをしないよ。タカはバカだね。わたしはお金も求めないし、だますこともしない。私にもプライドがある。タカは大きらい、さようなら」
業者では有り得ない、リスクを背負った怒りを露わにした文面だった。
貴男は、エロじじい、バカという単語に素直に怒りを覚えたが、アンナの言葉を反芻しているうちに、己の愚かさに贖罪を求め、騙されてでも信じたいと思うようになっていった。