「道化の涙に映る虹」第32話
前話
どこまで芝居を続けるつもりなのだろうか。
いずれ会いたいだの、金をくれだの言ってくるだろう。
貴男は暇潰しと空しさの間で返信を続けた。
勤務を終え、ジャケットの内ポケットからスマホを取り出すとLINEの着信を知らせるランプが点滅していた。
アンナからだったので返信せず帰宅した。
風呂に入り、夕食を終え、ネットサーフィンを深夜まで続け、ようやくアンナのLINEに返信すべくスマホをタップした。
耳介まで涙がはらりとこぼれた。
「パパちゃん。おとなになったら、いっしょにおだんごやさんやろうね」
みたらし団子が好きだった3才当時の娘の姿が浮かんでいた。
貴男は、返信する気力も失せ、電源を落とした。