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海辺のアップサイクリスト

アップサイクルとは、不要な廃材にデザイン等の付加価値を施して新たな製品に昇華させること。リサイクル、リユースの上をいく循環型環境ビジネスです。クリエイターの視点で提案していきます。

「道化の涙に映る虹」第15話

Serial novel Serial novel-第15話

 前話

upcyclist.hatenablog.com

 

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沙織が有休消化に入る前日に、奈緒美、有里子、貴男の参加で、ささやかな送別会が開かれることになった。

 

「ここ行ったことある?」

 

 

PCのディスプレイを見ている貴男の視界に、脇から入り込んできた奈緒美はキーボードの上にチラシを滑り込ませた。

 

 

「いや、無いな」
チラシを一旦裏返し表に戻して確認する貴男

 

 

揺らぎを入れたダイナミックな筆文字で、居酒屋海月と書いてあり、クラゲが浮遊する水槽の写真や、壁にたくさん飾られた海に浮かぶ月の写真、中央に簡単なお品書きが印刷されていた。

 

 

「前に沙織と何回か行ったことがあるんだ。結構良かったよ」

 

 

「送別会やる店?」

 

 

「そう」

 

 

「確かに、送別会は新しい所行くよりも、慣れた所の方がいいね。ここで良いんじゃない?雰囲気も良さげだし」

 

 

「そう思って」

 

 

「幹事は?僕がやろうか?」

 

 

「いや私がやるから大丈夫。ありがとう」

 

 

「じゃあ頼むね」

 

 

「了解」

 

 

 

貴男が居酒屋海月に着いた頃には既にみんな揃っていた。

 

 

 

クラゲが浮遊する水槽を横切り個室に入ると、沙織は微笑み、奈緒美は手招き、有里子は腰壁にもたれかかり沈んでいた。

 

 

程無く中生ジョッキが来ると

 

 

「さあ、沙織の前途を祝して乾杯といきますか、有里子さんもお通夜じゃないんだからね。パーッと飲もうよ」
奈緒美が、有里子に無理矢理グラスを持たせながら言った。

 

 

貴男は、有里子の様子が気になりながらも、沙織を見ていた。

 

 

「じゃあーいくよ~ん、クアンパイ~」
ムードメーカの奈緒美の変なイントネーションのお蔭で、吹き出しそうになりながら笑顔でジョッキをぶつけ合う。

 

 

思い出話に花が咲き、アルコールが進む

 

 

黙りこくっていた有里子は、飲むピッチが上がった頃に突然、
「私がヘマしなければ…」
堰を切ったように話始め
「ごめんね、本当にごめんね。わたしのせいで…」
有里子はハンカチで目を押さえながら泣きじゃくった。

 

 

「何言ってるの、本来私がやらなければいけない仕事。それをユリさんだけに押し付けた私の責任だよ。ユリさんは悪くない。それに、人事異動があった時点でいつ辞めようか考えていたの」沙織は向かいに座る有里子の手に自分の手を重ねて慰める。

 

 

何となく経緯が見えてきた貴男

 

 

「そうだよ。沙織ずっと言ってたもんね。だいたい、何で辞めたうつぼが営業部に戻って来るんだよ。おかしいよ」
おしぼりをテーブルに叩きつけながら感情を露にする奈緒美。

 

 

「うつぼ?」
貴男の問いに

 

 

「某高関女史」
有里子にタオルハンカチを渡しながら間髪入れずに答える奈緒

 

 

「名前言っちゃってるし」
貴男がツッコミを入れると

 

 

「社長の愛人だったりしてアハハ」
お参りの要領で柏手する奈緒美。皆笑い出す。

 

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