海辺のアップサイクリスト

価値観の見直しによって生活を好循環させること

「道化の涙に映る虹」第13話

 前話

 

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勤務を終えて自宅に着いた貴男は内ポケットからスマホを取り出す。

 

着信は無かった。

 

ジャケットを椅子の方に投げ、冷蔵庫の上にスマホを置き、中から500mℓの缶ビールを取り出した。

 

プルトップを開けて一口飲むと

 

「こんばんは お疲れさま。今日は大変だったね。差し支えなければ社長室で話したこと教えてくれませんか?」

 

貴男は送信した。

 

一本目を飲み干して二本目のプルトップに指を掛けた瞬間、着信音とともに青い光が点灯した。

 

貴男はスマホを落としそうになりながら、ディスプレイをフリックしてタップし、浮かぶ文字に集中した。

 

「こんばんは 社長室では質問攻めだった( ̄▽ ̄;) 当然ですね。社長や役員は、盗難や横領の可能性について聞いてきたけど、商品コードと価格の登録ミスで起きたことや仕入れ管理のPCとレジが一致していないことを説明して、何とか疑惑は晴れ解放されました。でも凄く疲れた。始末書は書きます。レジが古過ぎてイヤです。あー昨日休むんじゃなかった(´_`。)」

 

 「ごめんね。忙しいのに僕が無理に休みを取らせてしまったようで それが原因で起きたのか」

 

貴男は責任を感じた。

 

「私の方こそ愚痴ってごめんなさい。誤解を生んでしまって…。休みはスケジュールを見て、忙しくない日を選んで決めたの。あのバス十台はその後に予定に入ったんです。客室予約係に聞いたんだけれど、近隣のホテルのオーバーブック(過剰予約)でバス三台分の客がどうしても収容出来なくて、うちに流れてきたらしいの、だから貴男さんのせいじゃないから」

 

「それでも何だか責任感じるよ。事情はよく分からないけど」

 

沙織から返信は無かった。

 

 

三日後、沙織は退職願を会社に出した。

 

第14話につづく

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