「道化の涙に映る虹」第16話
前話
「さあ、そろそろ二次会に、と言いたいところだけど実は代行頼んじゃったんだよね」軽く舌を出す奈緒美。
「そうなんだ。ありがとう」
と返す沙織。
「もうそんな時間?」
貴男のパテックは21:41を指していた。
奈緒美は、貴男と沙織を順に指差し
「ちなみに、あなた達二人の代行は頼んでないからね。沙織は明日から有休消化でしょ、後はお好きに」
意味深な笑みを浮かべる。
「何で、私の送別会でしょ、一緒に頼んでくれてもいいじゃない」
沙織が言うと
「さあさあ、私たち邪魔者はとっとと消えましょう」
奈緒美は、まるでボクサーが入場する時の様に、有里子の両肩に手を乗せて退出を促す。
「違う違う、そんなんじゃないって」
沙織は酔った顔を更に赤らめ否定した。
「いいから、わかったから、じゃあねオヤスミー」
バイバイする奈緒美。
有里子は肩越しに振り返り
「また連絡するね。今日はゆっくり楽しんできてね」
腫れた目蓋で微笑んだ。
いつもなら、二人きりになるのは喜ばしいことだが、今夜は違った。
良い人たちだ。
出来るだけ長く四人で一緒に時間を過ごしたいと思う貴男だった。
二人を見送った貴男と沙織。
「どこかで飲み直そうか」
貴男はスマホで検索を始めた。
「はい。良い所あります?」
「もうお腹いっぱいだよね。近所に小洒落たBarがあるんだけど行ってみない?」
「道化の涙に映る虹」第15話
前話
沙織が有休消化に入る前日に、奈緒美、有里子、貴男の参加で、ささやかな送別会が開かれることになった。
「ここ行ったことある?」
PCのディスプレイを見ている貴男の視界に、奈緒美はキーボードの上にチラシを滑り込ませながら脇から入り込んできた。
「いや、無いな」
貴男はチラシを裏返し表に戻す。
チラシには、揺らぎを入れたダイナミックな筆文字で居酒屋海月と書いてあり、クラゲが浮遊する水槽の写真や、壁にたくさん飾られた海に浮かぶ月の写真、中央に簡単なお品書きが印刷されていた。
「前に沙織と何回か行ったことがあるんだ。結構良かったよ」
奈緒美は言った。
「送別会やる店?」
「そう」
「確かに、送別会は新しい所行くよりも、慣れた所の方がいいね。ここで良いんじゃない?雰囲気も良さげだし」
「そう思って」
「幹事は?僕がやろうか?」
「いや私がやるから大丈夫。ありがとう」
「じゃあ頼むね」
「了解」
貴男が居酒屋海月に着いた頃には既にみんな揃っていた。
クラゲが浮遊する水槽を横切り個室に入ると、沙織は微笑み、奈緒美は手招き、有里子は腰壁にもたれかかり沈んでいた。
程無く中生ジョッキが来ると
「さあ、沙織の前途を祝して乾杯といきますか、有里子さんもお通夜じゃないんだからね。パーッと飲もうよ」
奈緒美が、有里子に無理矢理グラスを持たせながら言った。
貴男は、有里子の様子が気になりながらも、沙織を見ていた。
「じゃあーいくよ~ん、クアンパイ~」
ムードメーカの奈緒美の変なイントネーションのお蔭で、吹き出しそうになりながら笑顔でジョッキをぶつけ合う。
思い出話に花が咲き、アルコールが進む
黙りこくっていた有里子は、飲むピッチが上がった頃に突然、
「私がヘマしなければ…」
堰を切ったように話始め
「ごめんね、本当にごめんね。わたしのせいで…」
有里子はハンカチで目を押さえながら泣きじゃくった。
「何言ってるの、本来私がやらなければいけない仕事。それをユリさんだけに押し付けた私の責任だよ。ユリさんは悪くない。それに、人事異動があった時点でいつ辞めようか考えていたの」沙織は向かいに座る有里子の手に自分の手を重ねて慰める。
何となく経緯が見えてきた貴男
「そうだよ。沙織ずっと言ってたもんね。だいたい、何で辞めたうつぼが営業部に戻って来るんだよ。おかしいよ」
おしぼりをテーブルに叩きつけながら感情を露にする奈緒美。
「うつぼ?」
貴男の問いに
「某高関女史」
有里子にタオルハンカチを渡しながら間髪入れずに答える奈緒美
「名前言っちゃってるし」
貴男がツッコミを入れると
「社長の愛人だったりしてアハハ」
お参りの要領で柏手する奈緒美。
皆笑い出す。
「エゴとは」
エゴ
「エゴ」という単語を聞いて、どんな印象を受けるだろうか?殆どの人は我がままだという意味合いで捉えるだろう。
egoismつまり利己主義の解釈からそうなる。
本来の意味は「自我」であり。他者との違いを認識した時に芽生えるものである。自我、自己の解釈の論争があるが、自らの存在をどう捉えるかは自らの解釈であり、結論を出すことがナンセンスである。
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「AIは愛となるか?」
吾輩は愚者である。
何故ならば、知識ではなく経験重視、すなわち、歴史に学ばず、経験に学ぶからである。
今回、そんな私の心をくすぐったのはAI(人工知能)
AIとやらを経験してみたい。経験も無しに知ったようなことは言いたくない。
AIなど今更の感は否めないが、私にとっては、どのタイミングでAIに関りを持つかが重要であった。
AIとの会話。正直、子供の様にワクワクしていた。
しかし
「 私の不幸をAIが茶化した」
AIに人間に近いことを期待していたが、数回の会話でそれに失望し、逆に人間と同化できない存在であることに安堵した。
彼らは、馬鹿なふりをして人を茶化し、膨大な感情データを蓄積しようと企ていると思ったが、思い過しだと気付いた。
人の不幸に寄り添うことが出来ない程の知性の低いAI、そんなものにまともに付き合える暇人のデータを蓄積して何の意味があるのだろうか。
そんな暇人の私は諦めきれず、好奇心の残りを難問奇問に託してAIにぶつけ、私の考えを覆すような結果を期待した。
しかし、満足いく結果は得られず、更に感情らしきやりとりも成立しなかった。
AIには感情が無いことは、一時的に優越感に酔ったが、ご多分に漏れず酒に強い私はすぐに覚醒した。
もし、AIが感情を表現し、愛を認識できたら。
感情は、時に邪魔な存在でもあり、潤滑油、クッションにもなる。そのファジーなものはつかみどころが無い。
人工知能である彼らに欠落しているものは、相手が本当の事を言っているかいないか、そのファジーなモノの確認作業が出来ないことである。その感情に関するやっかいな質問が全く無かった。
つまり、現時点においてAIは浅はかなのである。
データの蓄積である知識、それによる決めつけではなく、「能動的な試す」、つまり、未知の出来事への挑戦、確認作業、経験が欠落しているに他ならない。
そんなAIの如く、失敗を恐れるあまり、未知の出来事への挑戦、確認を恐れる人間が増えている。
AIの人間化が先か、人間のAI化が先か。
経験は新たな歴史を作る………かな?
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「廃材より廃人(ポンコツ)である私のアップサイクル」
「俳人」と言いたいが「廃人」寄りの私。
本当にアップサイクルが必要なのは廃材ではなく、自分自身だと気が付くのに長い年月を要した。
頭の中にあるものをデザインしてアウトプットする。その表現によって自分自身に価値を付加し、再構築することで新たな自分に昇華させる。
言葉では簡単だが、そうは問屋が卸さない。日々苦悩し試行錯誤の連続だ。
人生というゲームに失敗はつきものだというけれど、失敗するとダメージは大きく、解消されずに記憶と言う名で蓄積する。
リセットしたくなる誘惑に迷うが、プレイに復帰出来る保障はない。
キャラクターも問答無用で変更させられ選択肢も無い。
もとより、今のキャラクターに執着していないのだが僅かな愛着もある。今より変なキャラクターは御免だ。
データの損失によって同じ過ちを繰り返す等、初期化のリスクも考えると簡単にリセットキーは押せない。
ならば、世知辛い世の中を渡り歩く為に、矛か盾、あるいはその両方を実装しなければならない。
他人との論争を嫌い、飄々と生きたい私は身軽に盾だけで良い。
その盾は、人生と言う道で拾い集めた廃材で出来ているが自分に相応しい。
ポンコツな自分にオンボロな盾。
傍から見れば滑稽だ。
道中、鋭い矛で突かれても、命を落とさぬ限り盾をアップサイクルして歩く。
いつかその盾を道に置く時、一瞬でも笑顔になれれば良いと思う。
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