海辺のアップサイクリスト

価値観の見直しによって生活を好循環させること

「道化の涙に映る虹」第23話

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二日程して沙織からメールが入っていた。

 

「こんばんは この間はごめんなさいm(_ _)m 医療事務は初めてなので、覚えることがたくさんあってなかなか時間が取れませんでした。貴男さんに逢いたいけど、当分の間は、以前の様に時間が作れないかもしれません。(T_T)こちらが落ち着くまで待ってもらえるとうれしいけど(*^^*)」

 

「そうか、大変そうだね。どんなことやってるの?」

 

「うん。受付とか会計の手伝い、あとレセプト業務の手伝い。カルテの整理や電話応対、予約管理、そして、掃除とか雑用」

 

「レセプトって?」

 

「診療報酬明細書のことです」

 

「点数でやるやつ?」

 

「そう。あと、まだ何もわかんないから患者のクレーム対応とかもしんどい…。先輩にもイジメられないように頑張らないとo(^o^)o」

 

「そうか、辛いことがあったらいつでも連絡するんだよ」

 

「うん(*^-^)」

 

 

それからは毎日、二人の間で一日数回のメールと電話のラリーが続いた。

 

 

貴男の方も、仕事の量が増え、重要な仕事も任されるようになっていた。

 

逢えないことが当たり前のようになっていた二人。当初は言い合いにもなっていたが

いつしか、季節の移ろいとともにメールの行間が空き始めていた。

 

沙織のことが気になっていた貴男だが、追いかけることが、事態を好転させるとは思えなく放置していた。

 

事務所でコピーをとっている貴男の背中を指で突かれた。

 

驚いて振り向くと真顔の奈緒美がいた。

 

「あのさ、最近、沙織から連絡無いんだよね。前は私からメールするとそれなりに返信があったけど、こっちからメールしても返ってこなくなったんだ。辞めたあとはしょっちゅう連絡し合っていたけど。やっぱり私、沙織に何か悪い事したのかな?貴男さんから言ってもらえない?」

 

「連絡するように?」

 

「うん」

 

「わかった。言っておくよ」

貴男は安請け合いをした。実は自分も連絡取り合っていないとは言い出せないでいた。

 

僕たちのことは過去のこととして忘れたいのだろうか?

 

貴男は、ますます沙織に連絡してはいけないのではないかと思うようになった。

 

時々沙織のことを思う日があり、深酒した時は連絡したいという衝動に駆られたが結局連絡できなかった。

 

二人は自然消滅の形に納まっていった。

 

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