「道化の涙に映る虹」第22話
沙織が退職した後、販売部長とパートが売店業務を行っていたが、三週間後には新入社員がレジに就いた。
沙織の姿が売店に無くても、プライベートで繋がった貴男には寂しさは無かった。
しばらくして、沙織に新しい勤め口が決まった。病院の事務だった。
「今日、仕事終わったら家に来る?新鮮なサザエが大量に入ったんだ *^-^*」
沙織から貴男の業務終了20分前にメールが入る。
貴男はトイレに行くことを同僚に告げ返信する。
「ゴメン、明日、お客の忘れ物を届けなければならないんだ。知っての通り本来なら配送だけど、神奈川だから朝一で直接届けろと言うんだ。本当にゴメン (TmT)」
「仕方ないね(^_^)」
「今日夜勤じゃないよね。無性に逢いたい。ダメかな?」
「ごめんね<(_ _)> 今日夜勤なんだ」
互いの様子が見えなくなり、次第にすれ違いが多くなっていった。
逢えないのは自分にも原因があるにも拘わらず、避けられているように勘ぐった貴男は苛立ちを募らせ
「逢いたくないなら別れよう」
酔いに任せ、本心ではないメールを送信した。
一時間経過しても沙織から返信が無かったことから、貴男は駄々をこねた自分を恥じていた。
それから20分ぐらいして、沙織から
「 (*T_T*) 」
とだけ返ってきた。
深酒の貴男は着信に気付かず寝てしまっていた。
翌朝、貴男は
「昨日は大人げなかったゴメン」
と送信した。
その日、沙織からの返信は無かった。