海辺のアップサイクリスト

アップサイクルとは、不要な廃材にデザイン等の付加価値を施して新たな製品に昇華させること。リサイクル、リユースの上をいく循環型環境ビジネスです。クリエイターの視点で提案していきます。

「道化の涙に映る虹」第17話

 前話

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「どんなお店ですか?」

 

「候補は二軒あって、一軒目はセルフBAR〔自分勝手〕で、二軒目は〔Bar廃屋〕って店なんだけど」

 

「フフッ、何ですかそれ、どちらもふざけた店名ですね。全然おしゃれな感じじゃない。却下です」と笑顔の沙織。

 

沙織の反応に気を良くした貴男は続ける。

「この二軒、実は隣り合わせで、トイレは共同、店主は同じなんだ。人生いっぱいいっぱいの店主が精一杯作るカクテルが失敗だらけなんだ」

 

「アハハハハ、韻を踏んでる。貴男さんて、そんなキャラでしたっけ?面白い」

 

「ワハハ」

貴男もつられて笑う。

 

運転代行の車に乗り込む二人、程なくして着いた先には中古の一軒家。

 

「ここだよ」

 

「えっここ?」

沙織は、貴男の家であることは薄々感づいたが、少し驚く振りをした。

 

「やっぱり嫌かな?」

 

二人のやり取りを聞かれたくないので、代行の運転手には早々に帰ってもらいたかったが、沙織の気持ちが決まらぬうちはどうしようもない。

 

 少し間が開いた後

「では、いっぱいいっぱいの一杯というのを飲んでみましょうか」

沙織が答えた。

 

「たぶん、店主は腕によりをかけて作ると思うよ」

ギャラリーがいる中で体面を保ち貴男は安心した。

 

「ご苦労さん」

貴男は、煙草を吹かしながら二人のやり取りを背中で聞いている代行にお金を渡す。

 

沙織を勝手口に案内し

 「ここが、Bar廃屋」

続けて玄関に戻ると

「ここが、セルフBARの自分勝手。さぁどちらにしますか?」

ふざけてみせた。

 

「こっち」

玄関を指差す沙織。

 

「では、セルフなので飲み物以外は沙織さんが作ってね」

 

「えー」

 

ドアに鍵を差し込み、開けながら

「冗談、冗談。二人ともお腹いっぱいだから何も作る必要ないよ。さあどうぞ」

片手でドアを押さえ、沙織を招き入れる貴男。貴男の前を通り過ぎる沙織から、シャンプーと化粧品の香料が混ざった甘い香りがした。

思わず、そのまま抱きしめたいという衝動に駆られたが、外の月を見上げ一度大きく息を吐き、ドアとともに欲望を閉じた。

 

「ごめんね。こんな所で…殺風景だよね。断捨離しまくったんだ」

 貴男は部屋を見回す沙織をリビングに案内する。

 

 

 

「ここが我が家のBar」

バーカウンターテーブルの前の壁にはルーバーが付いた木製の棚があり、中にはスピリッツやリキュールのミニチュアボトルとカクテルセット、ワンショットメジャーが付いていた。

 

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「小さいけど、この中にひと通りのカクテルを作るお酒があるんだよ」

 

「コンパクトに収まってますね。もしかして手作り?」

 

「そう」

 

「凄い!」

 

「大したことないよ、ありがとう。沙織さんはここに座って」

貴男は二脚あるうちの一脚の止まり木に沙織を誘導し、もう片方の止まり木にジャケットを掛け、壁のフックからソムリエエプロンを取り素早く腰で結ぶ。

 

「わー本格的なんだ」

 

「ただの家飲みじゃ面白くないでしょ?グダグダを防止するための演出、カッコつけだよ」

 

「面白そう。期待してます」

 

「じゃあ何を作ろうか」

ワイシャツの袖をロールアップする貴男。

 

「うーん、でも私カクテルあまり知らないんです。チェリーブランデーを使ったカクテルが美味しかったのは覚えてますが、名前はわかりません」

 

「そうか、じゃあチェリーブランデー使ったカクテルを作るよ。レパートリー少ないからお任せで良いかな?」

 

「はい、お任せで」

  

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