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海辺のアップサイクリスト

アップサイクルとは、不要な廃材にデザイン等の付加価値を施して新たな製品に昇華させること。リサイクル、リユースの上をいく循環型環境ビジネスです。クリエイターの視点で提案していきます。

「道化の涙に映る虹」第9話

Serial novel Serial novel-第9話

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upcyclist.hatenablog.com

 

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沙織の車を先に帰した貴男は、中古のトールワゴンに沙織を乗せ、ラ・メルに向かった。

 

無残にも、オレンジ色だった夕暮れが閉じるのは呆気なく、ラ・メルに着いた頃には、貴男が事前に思い描いていたシチュエーションは消えていた。

 

百戦というより数々の敗戦で錬磨された貴男

 

「この夕暮れ、焦り過ぎだよね。せめて僕らが到着するまで待ってくれれば良いのに」

無意識のうちに軽口を叩いていた。

 

ここまでくれば、沙織の顔色を気にしていては先に進まないのは重々承知。

 

たとえ、ネガティブな現実があっても、できるだけポジティブな雰囲気を作るのみ。

 

それこそが女性が遺伝子情報に加えようとしているもの。

 

ゴルフが下手なのは既に沙織にインプットされている。

 

それがどうした、生きることに全く関係ない。

 

変な自信が身に付いている貴男は揺るがなかったが

 

「フフっ」

沙織が笑ったことで心底安心した。

 

「夕暮れが無くてもワインの美味しさは変らないよね。美味しい料理だってあるし」

 

「うん。はい。楽しみ」

 

ドアを開け下車した貴男は仰々しく助手席に回り込み、沙織を降ろした。

 

沙織は、いまだかつて見せたことがない笑顔を貴男に送った。

 

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