海辺のアップサイクリスト

アップサイクルとは、不要な廃材にデザイン等の付加価値を施して新たな製品に昇華させること。リサイクル、リユースの上をいく循環型環境ビジネスです。クリエイターの視点で提案していきます。

Serial novel

「道化の涙に映る虹」第36話

前話 upcyclist.hatenablog.com カーテンを超えて貴男の薄目に容赦なく差し込む日差し。そして、鮮やかなブルー。 否応が無くポートレートを撮って来いと言わんばかりの快晴だった。 昼まで寝たいという誘惑を断ち切り、貴男は布団を跳ね除け飛び起きた。 仕…

「道化の涙に映る虹」第35話

前話 upcyclist.hatenablog.com 「ゴメン。アンナ、いろいろあって疑り深くなっているんだ。赦してほしい。お金は無いけど友達でいてくれたら嬉しい」 半日ぐらい時間が経過したころにアンナから返信があった。 「タカは日本人なのにお金無いの?まあいっか…

「道化の涙に映る虹」第34話

前話 upcyclist.hatenablog.com 仕事中に容赦なく睡魔が襲う。 貴男は、中抜けの時間に一時間程仮眠を取り、目覚ましのエスプレッソを飲みながらスマホをタップしてLINEを開いた。 真っ赤なバラの様なチュチュを身に纏ったアンナ、そのトップ画像をタップし…

「道化の涙に映る虹」第33話

前話 upcyclist.hatenablog.com 寝ようとしても目が冴える。 夜中を三時過ぎた辺りからウトウトし、やっと眠りについた。 「パパ、今までありがとう。さようなら」 成人式の晴れ着を纏った美月は、貴男に背を向け歩き出した。 「美月、待ってくれ。本当に悪…

「道化の涙に映る虹」第32話

前話 upcyclist.hatenablog.com どこまで芝居を続けるつもりなのだろうか。 いずれ会いたいだの、金をくれだの言ってくるだろう。 貴男は暇潰しと空しさの間で返信を続けた。 勤務を終え、ジャケットの内ポケットからスマホを取り出すとLINEの着信を知らせる…

「道化の涙に映る虹」第31話

前話 upcyclist.hatenablog.com ミラ・ジョヴォヴィッチばりの美人。 いくらウクライナに美人が多くても、この写真はやり過ぎだ。 貴男のテンションは下がり、自分からLINEする気も起きなくなっていた。 翌日の朝、貴男は身支度を整えながら、充電器に挿した…

「道化の涙に映る虹」第30話

前話 upcyclist.hatenablog.com やはり詐欺業者か…。 当初から、日本人の成りすましか、六本木辺りで働いているウクライナ人の可能性も排除していなかった貴男は、モデルの様なアンナの添付画像見た瞬間、確信へと変わっていた。 最初から出来過ぎた話しだっ…

「道化の涙に映る虹」第29話

前話 upcyclist.hatenablog.com To bittukuri こんにちは ビックリさん ペンネームは驚く方のビックリだったんですね。笑いましたよ。 何にビックリしたのですか? キエフに遊びに行く時は、是非案内をお願いします。 僕が今住んでいるのは、静岡でも東の伊…

「道化の涙に映る虹」第28話

前話 upcyclist.hatenablog.com あくる日の夜にメールの返信があった。 From bittukuri こんにちは(^^)こちらこそ、よろしくお願いします。返事、心からありがとう^^スゴイ嬉しかったです。私は30歳の女性で、キエフに住んでいます。 私の日本語を褒めて…

「道化の涙に映る虹」第27話

前話 upcyclist.hatenablog.com 貴男はペンパルサイトにユーザー登録した。 サイトの趣旨は、あくまで幅広い文通相手を探すというのを目的としたもので、露骨に交際を求めることを禁止すると表示されていたが、交際することが本来の目的ではない貴男にとって…

「道化の涙に映る虹」第26話

前話 upcyclist.hatenablog.com ディスプレイの消えたスマホを握ったまま茫然自失となった貴男。 暫くすると、心は惨めな気持ちで大量出血を起していた。 応急処置が必要だったが、夜中の救急病院は24時間営業のスーパーしか無かった。 トールワゴンは救急車…

「道化の涙に映る虹」第25話

前話 upcyclist.hatenablog.com 深々としたお辞儀に、沙織の心境の変化を感じ取った貴男だった。 空白の二年。沙織に何があったのか? 寝付けずにいた貴男は、天井を見つめ当ての無い自問を繰り返していた。 決着をつけるため、沙織に確かめようとも思ったが…

「道化の涙に映る虹」第24話

前話 upcyclist.hatenablog.com あれから二年。 狭い町ゆえ、知り合いの車に遭遇することはちょくちょくあったが、沙織の車と遭遇するのは初めてであった。 二年も出会うことが無かった事実に、何故だと思う反面、素直に運命と信じても良いと貴男は思った。 …

「道化の涙に映る虹」第23話

前話 upcyclist.hatenablog.com 二日程して沙織からメールが入っていた。 「こんばんは この間はごめんなさいm(_ _)m 医療事務は初めてなので、覚えることがたくさんあってなかなか時間が取れませんでした。貴男さんに逢いたいけど、当分の間は、以前の様に…

「道化の涙に映る虹」第22話

前話 upcyclist.hatenablog.com 沙織が退職した後、販売部長とパートが売店業務を行っていたが、三週間後には新入社員がレジに就いた。 沙織の姿が売店に無くても、プライベートで繋がった貴男には寂しさは無かった。 しばらくして、沙織に新しい勤め口が決…

「道化の涙に映る虹」第21話

前話 upcyclist.hatenablog.com 日頃から眠りが浅い貴男は物音に敏感で、自分のものではない微かな寝息に目を醒ました。 そうだ、沙織は泊ったんだ。 昨日のことを反芻(はんすう)するが、断片的な記憶に不安が募る。 だが、スッピンの安心しきった寝顔を見…

「道化の涙に映る虹」第20話

前話 upcyclist.hatenablog.com 「うちの方は価値観のズレ。それが大きくなったことかな。そして引き金になったのは、経営していた会社の倒産。よくある話だよ」 「でもお子さんいたんですよね?やり直すとかは」 「もう大きいし、それに仕事に熱中するあま…

「道化の涙に映る虹」第19話

前話 upcyclist.hatenablog.com 貴男は続けざまにシェーカーを振るう。 トップを外したシェーカーから、氷の入ったワイングラスにペールピンクの液体が注がれる。 「それは何ですか?」 「ラムベースのイスラデピノスという名のカクテルだよ。スペイン語でパ…

「道化の涙に映る虹」第18話

前話 upcyclist.hatenablog.com 貴男は、棚から、チェリー・ブランデー、ブランデー、オレンジ・キュラソーのミニチュアボトルを取り出しカウンターに並べる。 「可愛い」 香水の小瓶でも見るように、ミニチュアボトルを一本、一本持ち上げて見つめる沙織。 …

「道化の涙に映る虹」第17話

前話 upcyclist.hatenablog.com 「どんなお店ですか?」 「候補は二軒あって、一軒目はセルフBAR〔自分勝手〕で、二軒目は〔Bar廃屋〕って店なんだけど」 「フフッ、何ですかそれ、どちらもふざけた店名ですね。全然おしゃれな感じじゃない。却下です」と笑…

「道化の涙に映る虹」第16話

前話 upcyclist.hatenablog.com 「さあ、そろそろ二次会に、と言いたいところだけど実は代行頼んじゃったんだよね」軽く舌を出す奈緒美。 「そうなんだ。ありがとう」 と返す沙織。 「もうそんな時間?」 貴男のパテックは、21:41を指していた。 奈緒美は、…

「道化の涙に映る虹」第15話

前話 upcyclist.hatenablog.com 沙織が有休消化に入る前日に、奈緒美、有里子、貴男の参加で、ささやかな送別会が開かれることになった。 「ここ行ったことある?」 PCのディスプレイを見ている貴男の視界に、脇から入り込んできた奈緒美はキーボードの上に…

「道化の涙に映る虹」第14話

前話 upcyclist.hatenablog.com 貴男が事務所からフロントに戻ろうとした時、奈緒美が小走りで近づき 「ねぇ知ってる?」 小声で聞いてきた。 「何が?」 貴男が尋ねると、奈緒美が耳打ちし「沙織のこと聞いた?」 「商品コードの登録ミスの件でしょ?知って…

「道化の涙に映る虹」第13話

前話 upcyclist.hatenablog.com 勤務を終えて自宅に着いた貴男は内ポケットからスマホを取り出す。しかし、着信は無かった。 ジャケットを椅子の方に投げ、スマホを冷蔵庫の上に置き、中から500mℓの缶ビールを取り出した。 プルトップを開けて一口飲むと 「…

「道化の涙に映る虹」第12話

前話 upcyclist.hatenablog.com 10万単位で金額が違っていた。明らかに単なるレジの打ち間違いではなかった。レジは古い機種で、仕入れ管理の社内LANと切り離され連動しておらず全てが手入力だった。 事の次第を求められ、沙織は社長室に呼ばれた。 役員を前…

「道化の涙に映る虹」第11話

前話 upcyclist.hatenablog.com 「じゃあ調整は後でね」 次の約束を取り付けた貴男は、グラスに残ったボルドーのメルロを一気に飲み干すと 「確か予定だと今日バス10台入っていたよね。明日、早いからそろそろ帰ろうか?」 バスの話など無粋だと思ったが、…

「道化の涙に映る虹」第10話

前話 upcyclist.hatenablog.com 男と女など、所詮寂しい動物で、シチュエーションさえ整えばどうにでもなる生き物。 互いに望む形をリアルタイムで探っている。 男は失敗を恐れ、女はリカバリーを冷静に、いや、ムードで見ている。 ラ・メルの窓辺にある筈の…

「道化の涙に映る虹」第9話

前話 upcyclist.hatenablog.com 沙織の車を先に帰した貴男は、中古のトールワゴンに沙織を乗せ、ラ・メルに向かった。 無残にも、オレンジ色だった夕暮れが閉じるのは呆気なく、ラ・メルに着いた頃には、貴男が事前に思い描いていたシチュエーションは消えて…

「道化の涙に映る虹」第8話

前話 upcyclist.hatenablog.com 何とかフルラウンドが終わった貴男。 沙織は幻滅しているに違いない。 想定外の出来事に翻弄されて内心穏やかではなかったが、そこは経験が浅い青年ではない。頭の中ではリカバリーを考えていた。 貴男は、会社が倒産しても最…

「道化の涙に映る虹」第7話

前話 upcyclist.hatenablog.com 貴男は、左手に嵌めたグローブの裾を手首側に強く引っ張り、グー、パーを繰り返しながら手にフィットさせた。 カートに積んであるゴルフバッグからドライバーを抜き、ティグラウンドに立って素振りを一度、そして、グリーン上…